考察。大人のZガンダム鑑賞法①
「君は刻の涙を見る」
自分は幼少期にZガンダムをリアルタイムでみていた。もちろん好きなアニメではあったが大人になってちゃんと見返したのは初めてである。
今回改めて観賞して子供の時に見ていた印象とあまりに異なるため、そのことを書いてみたいと思う。
Zガンダムというアニメは高密度
戦争、スペースノイド、スピリチャルといったSF的なテーマから、アダルトチルドレンなどの現代社会の問題。そして主人公カミーユ・ビダンを取り巻く女性達、人間模様が文芸性高く描かれている点など、多くの要素がアートとして融合しかつエンターティンメント作品として楽しめる。
アニメという枠を超えた作品、深みがありまくり
そして、当たり前だがモビルスーツのデザイン、登場の仕方の工夫など子供むけの玩具商売としての側面もきっちりとこなしている作品である。
世間一般的には子供むけの玩具アニメ。主人公の最後のシーンや富野監督の独特の台詞回しなど奇抜さが印象強く、アニオタ的には単なる鬱アニメだとしか認識されていないことが多い。
この作品を丁寧に鑑賞してみて、決して奇抜さでだけはなく全て計算されてることに気づくことができれば、この作品のSF的な巨大なテーマや時代を超えるスケールの大きさ、そして奥深さを感じとることが出来ると思う。
近未来、スペースノイドが地球から誕生して、あたらな種族として新しい文明を作っていく大きな時の流れ。宇宙世紀における人類の進化・進歩(とその落胆)をテーマにした巨大SF叙事詩
もちろんモビルスーツのデザインが格好いいとかZガンダムや百式などの開発の背景設定などもマニアなどを楽しませる仕掛けが用意されており、そういったホビー的な要素・遊び、つまりエンターティンメントなサービス精神を発揮しつつも、富野由悠季監督はこの作品の主題はSFとして「生命の進化」、「種の文明の進化・精神性とは何か?」といった巨大なテーマが物語の根底に流れている。
アイザック・アシモフとスタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」に匹敵する巨大さと普遍性
Zガンダムが放映された時代のムーブメントとして70’から80’に起こったSFブームの流れがあり。その中でも著名なアーサー・C・クラーク,スタンリー・キューブリック監督「2001年宇宙の旅」があり。その物語で示されたテーマ「知的生命体との文明接触」や「人類の進化」が根底に語られているが、この富野由悠季監督のZガンダムも前作のガンダムのテーマをさらに掘り下げ、巨大な俯瞰した視点「地球からスペースノイドという新しい種族が生まれる」という大きな宇宙の時間の流れのなかの一瞬の出来事を、旧文明が滅んでいく様や、我々の愚かさや逆らえない宿命、運命や人との出会いを描くことで、日本人や現代人がおかれている同様の構造を巨大なSFテーマとともに物語っている。
Zガンダムが毎話密度濃く、おそらく他のアニメの3倍程度の内容の濃さであるとおもうが、テクニカル・高度かつ巨大な俯瞰した視点で映画を作るようにアニメが創作されていることに気付かされ、富野監督の鬼気迫るモノが作品から伝わってくる。
アニメ初心者は1話から20話までを丁寧に視聴することをオススメします
Zガンダムは全話50話と長く、全てをみるのは大変だと身構えてしまうかもしれません。ながらで見てしまうと今まで述べた様な視点を追うことができないので、未視聴の方は先ずは物語の前半のクライマックスである、地球圏脱出の20話までを見る事をオススメします。
ネタバレにならない程度に、物語の理解のための補助線を引かせてもらうと。SF的テーマとして「地球圏での旧人類(ティターンズ/エリート主義)とスペースノイド(カミーユやエウーゴ)の独立性や戦い」、「文明進化的なモノ」をテーマにしている。
その中で、人工的に生み出された強化人間という狂気の技術に命を弄ばれたフォウ・ムラサメと、スペースノイドとして新しい種族としてのニュータイプとして命をもったカミーユ・ビダンが地球から巣立っていく種族と送り出す側とそれを見守る人々や戦いに巻き込まれていく人々を描いている。
「地球の重力」「強化人間」「ニュータイプ」「大人と子供」などといった独特なキーワードがたくさん出てくるがこれらについても物語の核心と常に関連性をもって、キャラクターの心模様やSF的なものまで複雑に絡み合って世界観を構築されている。
この20話までで一旦物語は一つの区切りを迎えるので、このすばらしい物語に触れてもらうきっかけになればと思います。
(記事追記中 2019/2/26)
大人のZガンダム鑑賞法② Zガンダム 第34話「宇宙(そら)が呼ぶ声」
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富野由悠季の世界
なんと今年2019年にエキシジョンが開催される。