機動戦士Zガンダム_考察
アート

考察。大人のZガンダム鑑賞法② 第34話「宇宙(そら)が呼ぶ声」

みんなスピリチュアル「宇宙が呼ぶ声」

この回も一見地味にみえて神回だった…

初回放送当時に見たときの感想は「レコアさんがシロッコに側に寝返る(子供むけのアニメとしては)変な話し」ただそれだけの印象しか残っていなかった。

大人になって古今東西の文芸、サブカル作品などに触れた経験を踏まえた上で見直すとなんとも”スピリチュアル”な趣と深さを持った話であることに気づかされる。

舞台はスペースノイドが宇宙進出し宇宙での戦をしている最中。主人公カミーユたちを擁するエゥーゴが宿敵パスティマス・シロッコの思念・精神などに乱されているせいなのか各クルーの精神が病んでいく様な描写が綴られていく。

その様な尋常でない状況下において主人公のカミーユ・ビダンだけが気力を保ちもっている描かれている。それはNewtype特性としての強さなのか…

メンタルがやられた大人「シャア・アズナブル」

クワトロ・バジーナ(シャア)はエゥーゴを去ったレコアの部屋に残されたサボテンを見て「サボテンに花が…」と呟く。精神的に少し疲れたのか、若干気が触れている様子が描かれている。

シャアの目に映ったのは、殺風景なレコアの部屋に咲いたサボテンが花。それはレコアが相手の陣営に寝返った故に、レコアの部屋のサボテンが花を咲かせた、という意味なのか…

さらに、それに重ねてシャア自身の存在理由が戦争での人殺しでしか見出せないという、自らの抗えない運命とも重なって暗示している様にもみえる。

戦争の道具として自らをおとしめており、そんな境遇をさらに達観しきれていない戦争によって狂ってしまった大人としてのシャアが描がかれている。

”刻の涙”ゼータという悲劇の物語

時の流れや大きな時代のうねりの中で、自分ではどうしようも無く生きる道を見いだせないちっぽけな存在。かれの背負った宿命や人々の人生の無常さを表現している。

劇場版ガンダム・逆襲のシャア」へと引き継がれる共通テーマ

ゼータでは同じくアムロ・レイも戦争の道具としての描かれているがシャアほどの闇は抱えていない。このテーマは「劇場版ガンダム・逆襲のシャア」へと引き継がれ、ガンダムの主人公とその永遠のライバル2者の対比が後の物語として引き継がれ描かれていくことになる。

このゼータ34話で再び主人公カミーユがシャアの顔面をグーぱんで殴るのだが、この辺りニュータイプ同士の激しい感情ぶつかり合いもみることが出来きてそれもまた面白い。

「ニュータイプとは自分ではない他人ををわかり合うことができる存在」としてガンダムの劇中では度々言われている。この様にニュータイプを富野監督は描いてきたのだから、余計にこのカミーユがシャアをグーパンで殴るこのシーンはZガンダムを物語る重要なポイントが濃縮されている。

富野監督が自ら空前のヒットアニメである前作の(ファースト)ガンダムの否定しているのだろうか。様々な視点で考察することができる濃密なZガンダム34話である。

一方、敵陣に連れ去られたレコアと野蛮な兵士ヤザンとの関係は…?!

レコアの寝返りもヤザンの欲望に生きる姿に惹かれているようにも思える。シロッコに洗脳または女として惹かれ寝返って行ったことは理由としてあるだろうが、それだけでなくヤザンの手に抱かれてカミーユ達を後にしていったところも注目したい。

おそらくこの伏線は何話目かに回収される「奇抜なセリフ」もしくは、何らしかの説明がなされるだろう。

登場人物全員がスピリチュアルな世界にズッポリ

ブライト・ノアはエゥーゴの活動スポンサーであるウォン・リーに対して「物質的な側面ではなく内面・精神的な側面をみることが大切」と話すくだりがある。

あいかわず盛りだくさんに詰め込まれてはいる回なのだが、このエゥーゴのクルーの内面がスピリチュアル的に描かれており、それぞれのコミュニケーションの根源にある嘘偽りのない本心、心の有り様、すれ違い、背負っている運命などが詳細に演出されている。

TV番組の30分もない短いな時間の中で、これらの話しが詰め込まれているので、すこし目を離したすきに拾えない内容があるくらいにZガンダムは毎話が密度が濃い。

ブライト・ノアをはじめとしたエゥーゴのクルー達の魂・精神が動揺していく様がそれぞれ個別に描いている。

この34話のタイトルのとおり「宇宙(そら)が呼ぶ声」、劇中のレコアはその声に導かれてエゥーゴから敵に寝返るのだが、同時にクワトロ・バジーナ(シャア)、カミーユやブライト、ヤザンなど登場するスペースノイド達の「宇宙(そら)の声」が響きあうという、二重、三重と意味が重なる内容の濃厚なスピリチュアル・SFな神回であった。

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この回も20話「灼熱の脱出」につづく神回でした
富野監督凄すぎです…